| ■スベン・オットーさんの絵本 |
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Svend Otto S.1916-1996 デンマークのコペンハーゲン生まれ。デンマークを代表する絵本画家・イラストレーター。1978年国際アンデルセン賞画家賞を受賞。主な作品に、『みにくいあひるの子』(ほるぷ出版)、『おやゆびひめ』(童話館出版) 、『よろこびの木』(徳間書店) など。 (『ニッセのポック』あすなろ書房 著者紹介 より)
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| 『ニッセのポック』*『ティムとトリーネ』*『おじいちゃんにあいに』 |
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『ニッセのポック』 オーレ・ロン・キアケゴー作 スベン・オットー絵 枇谷 玲子訳 あすなろ書房 2006年
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デンマークのクリスマスにかかせない小人の妖精・ニッセの気配を確かに感じながら、田舎のおじいちゃんの家で楽しくたくましく過ごした、ぼくのクリスマスまでの一ヶ月の物語。 いわゆるサンタクロースはこなくても、古くからのよき隣人・ニッセへの親愛と敬意に満ちた、とっておきのデンマークのクリスマス。 12月1日から、一章ずつ大切に読み進めたいですよね。
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十二月一日
クリスマスが近づくと、ぼくは、田舎のおじいちゃんの家で、おひゃくしょうさんになる。8歳でおひゃくしょうさんは早すぎるから、見習い、といったほうがいいかな。 いなかに住むおじいちゃんが、お母さんに言ってくるんだ。 「そんな小さな子を都会においておいたら、くさっちまう。いなかにこさせて、鼻に雪がつまるくらい、必死で雪かきさせなきゃ。ひげからつららがたれ下がるような寒さの中で牛や馬の世話をすれば、たくましい子になるぞ」
ぼくにはまだひげはなくて、ひげがあるのはおじいちゃんと、小人の妖精のニッセ。 はるばるおじいちゃんの家に着いたとき、うわさのニッセから手紙が届いたんだ。近いうちにやってくるって! それも、今年のニッセはなんとポック、手のつけられないいたずらもののじいさんなんだって!
こうして、ぼくとおじいちゃんとニッセのポックの、クリスマスへの一日一日の物語がはじまったんだ・・・。
12月1日から、クリスマスまで一日ずつ、小さな物語の形式で、ぼくがおじいちゃんや家畜たちや、ニッセのポックと過ごした田舎の日々を、ぼくのまなざしで描いた読み物。 ニッセのポックの気配をあちこちに感じて弾むぼくの心や、さらにはつかまえてみたいと考える子どもらしいいたずら心、ニッセとともに生き抜いてきた素朴で陽気な田舎の老人たちとの心温まる交流が、少しずつさらさらと降り積もる雪のように、物語を満たしています。田舎の老人たちが元気なのも読んでいて嬉しいし、ときおり、ニッセの目から見た物語がさしはさまれているのも、ニッセの存在をますます確信できて嬉しいですよね。
子どもみたいにいたずら好きで、ちゃっかりしていて、かと思うと誇り高く、義理堅くて、人情にも厚い、陽気で素朴なニッセが、ときにこっそりと、ときに大胆に、ときにおすまし顔で、物語の中をあちこちとかけめぐり、いきいきと魅力的な輝きを放っています。
そこここに自分の痕跡やいたずらの形跡をはっきりと残しつつ、なかなか全貌を見せないで、住人をやきもきさせてくれる用心深くて楽しいニッセ。無視されると怒り、認められると喜びをおさえきれない無邪気なニッセ。動物たちと親身に言葉を交わし、相談にのったり忠告したり、人間の流儀や、人間との付き合い方を教えてやったりする人のいいニッセ。 動物たちに対してほどに、人間には心をひらいていないのかもしれませんが、結末のとびきりの出来事は、読んでいて本当にわくわくして、嬉しさにときめく場面でした。 ニッセ、大好き!
デンマークに伝わる素朴で温かいクリスマスの風習を、身近に感じることのできる一冊。 いつまでもニッセのポックが楽しみに訪れてくれるような、豊かなクリスマスが続きますように。
スベン・オットーさんの、鉛筆画のデッサンのような、いきいきと均整のとれたイラストは白黒。ニッセのイメージやデンマークの田園風景を見事にとらえながら、さらに想像を広げることができそうな感じです。
原書は、『MIG OG BRDSTEFAR-OG SA NISSE POK』1982 Gyldendalske Boghandel とあります。
テキストのオーレ・ロン・キアケゴーさん(1940-1979)は、1940年デンマークのオーフス生まれ。 小学校教師として教鞭をとるかたわら、教室で子どもたちに自作の物語を読み聞かせしながら、創作を続ける。1969年『アルバート』で、デンマーク文化省児童図書賞を受賞。1972年に『かえる食いのオーラ』で、1974年には『トッパーのえんぴつ』で、国際アンデルセン賞優良作品賞を受賞。その他の作品に、映画化された『こしぬけターザン』(邦訳はすべてさ・え・ら書房)など。 とあります。 (『ニッセのポック』あすなろ書房 著者紹介 より)
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『ティムとトリーネ』 スベン・オットーえ 奥田継夫・木村由利子やく 評論社 品切れ 昭和54年
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ニンゲンを知るがゆえに、ニンゲンに近づかないトロルですが、遊び相手のいない息子・ティムのために、ニンゲンの女の子・トリーネを山にさそい、みんなで熱くもてなします。
トロルのティムの一家と、ニンゲンのトリーネの、素朴で温かな交流を描いた、いとおしい物語。
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森がとぎれたところの、こけのついた岩のあたりのほらあなに、トロルの一家が住んでいました。ニンゲンに姿を見られないように気を配りながら。 トロルはしっていたのです。 ニンゲンはすがた、かたちのちがうものをおそれ、きらうことを。・・・。
ほんとうはトロルのこのお父さんも、そして、お母さんトロルも子どものティムきみのわるい怪物ではありません。まるまるばなに、ぽっちり目、しっぽがあって、ぼさぼさあたま。ニンゲンとすがた、かたちがちがうとはいえ、ようきでした。ただ、ティムだけはさみしい毎日をおくっていました。あそびともだちがほしいので。
・・・
ある日ティムの見つけたのは、森を歩くニンゲンの女の子・トリーネでした。ともだちになれたら、どんなにか、すてきでしょう。 次の朝ティムは、お父さんといっしょに女の子の家をみはり、両親が働きに出たあと外遊びに出てきたトリーネに、思い切って近づきました。後ろにいたティムのお父さんは、 「ティムや。やっぱり、山にかえろう。ニンゲンのちかくにいるのは、どうも、気がすすまん。だから、おじょうちゃん。山にあそびにきておくれ。かえりたくなったら、すぐにも、つれてかえってあげるから。」トリーネはこっくりしました。 ・・・
人里離れた森の奥に、人知れず、陽気に暮らす、トロルたちの物語。 友だちがほしいトロルの男の子・ティムと、純真なニンゲンの女の子・トリーネの、ひとときの交流と、素朴なトロルたちのもてなしを、温かなまなざしで描いた絵本。 ニンゲンを知っていて、決して近づかないトロルたちの、わが子の淋しい気持ちをおもんぱかるやさしさ、ニンゲンの女の子を息子の客として心からもてなすふところの豊かさが、切ないほど胸に染み入ります。 トロルのお母さん、お父さんの、大口を開け少ない歯を見せて笑う豪快な笑顔や、かかえたりゆらしたりする堂々としたたいこばらが、本当にすがすがしくて、頼もしい感じです。 北欧の冴え冴えとした森の景色に照らされて、トロルたちがにぎやに踊る場面は、ほんとうに神々しいくらいきれい。 スベン・オットーさんの静かでひたむきな水彩画が、おおらかで繊細なトロルと厳しく豊かな森の魅力をあますところなく照らし出していて、まぶしいです。
深い森の雪のようなトロルの純朴さが、これからもずっと守られますように。 私にとって、現在品切れのこの絵本は、永遠の探求本の一冊となりました。
原書は『TIM OG TRINE』1976 Gyldental Ltd., Denmark とあります。 英語版は、おそらくこちらだと思われます。↓
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『Tim and Trisha (ハードカバー) 』 Michael Joseph (1977/3/14) |
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『おじいちゃんにあいに』 ハンス・ピーターソン/ぶん スベン・オットー/え 奥田継夫 木村由利子/やく アリス館 1989年 品切れ
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働く大人は忙しく、子どものリナの相手をしてくれるのは、森にすむおじいちゃんだけ。 リナは秋の深まる森をおじいちゃんの家に向かいます。ゆっくりと流れていく季節、命のいとなみを感じながら。 北の森の美しさ、命の輝きが美しい絵本。
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リナは、にわに、でてみました。 花がいっぱい、さいてはいても、秋がきていました。 おかあさんは、リンゴ・ジャムづくりや、シロップづくりなど、秋はいそがしくて、リナに、かまっているひまもありません。 森にすんでいるおじいちゃんだけが、リナのあいてをしてくれます。 「おじいちゃんのところへ、いってきますからね。おかあさぁん。」
とおい、くらい森の道を、リナは、歩いていきました。来年からかよう学校のことをかんがえたり、リスや鳥や花のつぼみに、確かな季節のめぐりを感じながら。 ・・・
鉛筆やペンではなく、筆によるデッサンのような、澄みきった水彩のイラストの美しさに、時の流れがとまったよう。いえ、そこには秋が流れているのですよね。刻一刻深まり、冬へと確かにつながっていく秋が。 写実的でありながら、輪郭線をあまり持たないために、どこか影絵のような、墨絵のような、美しく繊細な緑の森の風景。その中を歩いていく、髪を二つに結った女の子・リナの、こもれびをあびてはつらつと輝くあどけない顔が、とても明るくて、まぶしくて、きれい。
森の中の命のいとなみの中に、子どもなりに秋を感じ、続く冬を感じ、やがてめぐる春を感じ、たどりついた温かな家の中での、おじいちゃんとのゆったりとした対話の中に、終わりなく続いていく季節の輪廻を感じ取ってゆく。 命のはじまりの若々しいリナと、たそがれをむかえつつあるおじいさんの孤独が、二人をそっとくるみこんでなおもよどむことなく回っていく時間の輪の中で、静かに共鳴する。 リナの目線で描いた美しく繊細な景色は、何の派手さも奇抜さもないのに、ドラマティックに、心にふりつもります。 世界中の子どもたちと老人が、こんな豊かで静かで濃密なひとときを過ごせますように。
巻末の奥田継夫さんの文章『おじいちゃんにあいに』も格別の味わい深さです。 この絵本は、 「絵はデンマーク人のスベン・オットーが描いたものだが、原文章はスウェーデン人のハス・ピンターソンが書いた」 そうです。翻訳にあたっては、 「原文はスウェーデン版・デンマーク版・英語版の三つをつきあわせた。三つのあいだに差のあるときは日本語で統一した」 とあります。 (『おじいちゃんにあいに』アリス館、品切れ 巻末の文章『おじいちゃんにあいに』 奥田継夫 より) 美しいイラストと文章のそれぞれの背景、そこからそれぞれ流れてくる物語を、丹念に探求して吟味して、日本語訳をしてくださったのですね。 品切れは、本当に残念。またまた個人的に熱い探求書が一冊増えました。
ハンス・ぺテルソンさんの他の邦訳作品には、『さびしがりやのミーナ』(文化出版局、品切れ、絵本)、ハンス・ぺテルソン名作集シリーズ『マグヌスと子いぬ』(ポプラ社、品切れ、読み物)などがあります。
(原書について・・・貴重な図書館本を参照にしているのですが、原書表記部分がちょうど位置的にカバーでのりづけされる部分にあたっていて、読むことができませんでした。ご存知の方教えてくださいませ。)
余談ですが、実は私はハリネズミ絵本がひそかに大好き。この美しい北欧の森絵本の中にも、最後にまあるくなって冬眠するハリネズミのイラストが登場して、チクチクときめいてしまいました。
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