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『はるになったら』 シャーロット・ゾロトウさく ガース・ウィリアムズえ おびかゆうこやく 徳間書店
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あるひ、ちいさなおんなのこが、ちいさなおとうとにいいました。
はるになったら、おはなをたくさんつんできて、はなたばをつくってあげる
うみにいったら、まきがいをひろってくるわ。 なみのおとをきかせてあげる。
・・・。
ちいさなちいさな弟をいとおしく見つめる、ちいさな姉の愛らしいつぶやきを、野の花のように可憐に、春風のようにふんわりと、みずみずしく描きとめた美しい絵本。 少しアンニュイで、無垢な瞳が、とっておきのないしょ話のように忘れがたく、心の中で何度でもきらきらと光を放ちます。
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萌黄色、というのでしょうか、めじろような、淡い黄緑色がとても美しい表紙です。 大好きなアメリカの画家、ガース・ウィリアムズさんと、しっとりとした雰囲気のある素敵な作家、シャーロット・ゾロトウさんの、夢のような共演。 原書は 『Do You Know What I'll Do?』、HaperCollins Children's Books N.Y.,a division of HaperCollins Publishers Inc.,1958 と、あります。 なんと1958年初版の作品なのですね…。
かつて福武書店(ベネッセ)より、『のはらにおはながさきはじめたら』 という題で出版されたものの、長く版が途絶え、ずーっと、いつかどこかでの復刊または再販を切に心待ちにしていた作品。 祝・復刊、ですよね。よかった、お帰りなさい!
ページをめくると、やわらかな線画に、淡いセピア調のやさしい配色。 ガース・ウィリアムズさんの描く、動物や人物のいきいきとした瞳はとても印象的ですが、この 『はるになったら』のねえさんの少しアンニュイに伏せられた瞳も、豊かな表情をうちにそっと秘めていて、長く心に残ります。
はるになったら・・・ ゆきがふったら・・・ えいがにいったら・・・
ちいさな姉が、まだちいさくて何もできない弟に、そっと約束を語りかけます。 おねえちゃんが、こんなふうにしてあげるね。 おみやげをもってかえってきて、 みんなみんなおしえてあげるね。
ちいさな弟の前で少し背伸びをしてみたい、姉らしい愛情に満ちたやさしいまなざしは、幼いながらも母性本能や、ほのかに色気さえ感じます。 ちいさな姉弟のピュアないのちの輝きと、姉のやさしい思いやりを、しっとりとみずみずしく、大切な古いアルバムをひもとくように描きあげた、美しい作品。ガース・ウィリアムズさんの絵本はこちらにも≫
シャーロット・ゾロトウさんの、きょうだいを描いた作品で、 兄と妹編の 『にいさんといもうと』 (岩波書店 品切れ ▼)、 姉と妹編の 『ねえさんといもうと』(福音館書店 限定復刊 ▼) 、 兄と弟編の『おとなになる日』(童話屋 ▼) という絵本などがありますが、『はるになったら』は、姉と弟編として、私の中で一連のシリーズとしてとらえられている大好きな物語です。
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『ねえさんといもうと』 シャーロット・ゾロトウさく マーサ・アレキサンダーえ やがわすみこやく 福音館書店 品切れ
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あるところにねえさんといもうとがいました。 なんでもしてくれるねえさんです。 「さあ」だの、 「ほら」だの、 「こうなさい」だの、 「だめよ」だの、 なんでもしっているねえさんです。
でも、あるひ、いもうとはひとりになりたくなったのです。 ・・・。
はかない色彩をほどこしたきめこまやかな線画と、品のよいやさしい言葉をちりばめた繊細なテキストで、姉と妹のゆれうごく心の軌跡をみずみずしく描いた、アメリカの古典絵本。 小さな妹を守り、教え、導いてきた妹思いのねえさんの気持ちと、そうしてこれまでやってきて、少しだけ大きくなったいま、少しだけねえさんから独立してみたくなったいもうとの気持ちが、野に美しく咲き乱れる野菊を揺らす風のように、さわやかにふきぬけます。
2006年限定復刊でしたが、品切れ間近・・・?
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2006年、福音館書店の限定復刊絵本の一冊でしたが、いまではどうやら品切れのようですね・・・
はかない桃色は、強い日差しにさらされるとすうっと褪せてしまいそう。草の露のような淡い緑色は、かげろうのように空にとけてしまいそう。鉛筆のデッサンのような繊細な線画は、強い風がふくとはらはらとこぼれおちてしまいそう。 そんなナイーブなイラストが、感じやすい姉妹のうつろう心を、ひっそりとぴったりとよりそって描いています。 ワンピースからのびるほっそりとした手足のように、しなやかで美しいテキストと、訳文が、すれ違い、そしてまたあらたに寄り添う姉妹の心を、みずみずしく描き出しています。
守るものと守られるものの、やがてたどる運命・・・守られる居心地のよさを、ある日ふと抜け出してみたくなったら、ひなどりの巣立ちのように、自分の足であるきはじめる一歩かも。
この絵本に出てくるレモネードの、なんと涼やかでおしゃれな響き! 妹思いのやさしい姉と、ちょっぴりおきゃんな妹ののどをうるおす、とてもぴったりの飲み物ですよね。
原書は『BIG SISTER AND LITTLE SISTER』Harper&Row,Publishers.Inc.,New York.とあります。最初のコピーライトは1966年。 アマゾン洋書ではこちらなど、時を越えたロングセラーなのですね。
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『Big Sister and Little Sister』 Trophy Pr
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イラストのマーサ・アレキサンダーさんをアマゾン洋書で検索すると、たくさんの作品がヒットしました。
『Blackboard Bear』Candlewick Pr、などの「Blackboard Bear」シリーズ、
『When the New Baby Comes, I'm Moving Out』Charlesbridge Pubなど、ロングセラー絵本も多いようです。
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『にいさんといもうと』 シャーロット・ゾロトウ文 メアリ・チャルマーズ絵 矢川澄子訳 岩波書店 1978年 品切れ
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あるところににいさんといもうとがいました。にいさんはいもうとをからかってばかりいました。
おまえのキャンデーもらった。 にいさんがいいます。
いもうとはなきだしました。
でも ほんとはひとつもたべやしなかったんです。 ・・・。
やんちゃでいたずらっこの兄と、素直でおとなしい妹の、愛らしいやり取りの繰り返しが楽しい絵本。 兄の思うままに泣かされていた小さな妹は、やがて涙の影から兄のやり方を学び取り、兄の気持ちを見ぬくまでにゆっくりと成長します。 空色とレモン色の取り合わせがきわめて美しく、きりっとさわやかな、心に残る大切な絵本。
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シャーロット・ゾロトウさんのシンプルでやんちゃなテキストに、やわらかい線画の、兄妹の洋服にのみ水色とレモン色を施したすがすがしいイラストが、とてもひきたつ絵本です。
好きだからからかってしまう・・・少年の初恋のような兄弟愛に、心がなつかしくほのぼのしてしまいます。 兄がからかうそのひとつひとつのエピソードが洒落ていて、そのたび兄の思う壺に泣き出す妹の、繰り返しも心地よく(妹には気の毒ですが)、もう少しだけ、兄のちょっかいと妹のべそ顔を見ていたいな、と思ってしまいます。 当事者の妹にしてみれば、何が何だかわからないままにからかわれ、泣かされて、とんだ目にあわされているのですが、やがて、泣きながらもしっかりと目を見開き、兄を見つめ、物事を見極めるようになります。
小さないもうとの、ゆっくりとした、大きな変化に、やがて気づいたにいさんは・・・。
この絵本にもおやつが出てくるのですが、そのレモンパイの、あまずっぱくてさくっとした響きが、にいさんといもうとにまさにぴったり!
原書は『BIG BROTHER』Harper&Row,Publishers.Inc.,New York.とあります。コピーライトは1960年。 イラストのメアリー・チャルマーズさんをアマゾン洋書で検索すると、 『Marigold and Grandma on the Town (An I Can Read Book)』Harpercollinsや、 『Take a Nap, Harry』Harpercollinsなどの「ねこのHarry」シリーズなどがあるようです。 ≫かつて紹介された邦訳作品『おとうさんねこのおくりもの』(福音館書店、品切れ)は、こちらをご覧になってくださいね。
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『おとなになる日』 シャーロット・ゾロトウ文 ルース・ロビンス絵 みらいなな訳 童話屋 1996年
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まだ小さいティモシーは、大きいにいさんのジョンが大好き。 ジョンが学校から帰ってくるなり、「おかえり、おかえり」とまといつき、ジョンのすることなすこと、「ぼくもぼくも」とまねたがります。 ジョン一色のティモシーを可愛く思いながらも、ときにうっとおしくも思ってしまうジョンと、ひたすらジョンにささげたティモシーの日々は、ゆっくりと、でも確実に過ぎていきます。
ある日、隣の家に、小さな男の子が引っ越してきて・・・。
小さな弟の、あこがれるまっすぐなまなざしと、大きなにいさんの見守る温かなまなざしが、さわやかに心に残ります。 にいさんの奏でる気の利いたラストが心にくく、それを誇らしく思う弟が抱きしめたくなる愛らしさ。
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原書は 『TIMOTHY TOO ! 』 Houghton Miffilin Co.,Boston 1986年、とあります。 表紙は ・・・オレンジ色の地に、写真のような四角いわくがぽっかりと描かれ、広がるさわやかな青空のもと、オーバーオールの男の子が、後ろ手を組んで、少し上の方をみつめている横顔のイラスト。 オレンジ色の地模様の、色鉛筆でしょうか、さらさらしゃっしゃっと、緑やオレンジ色のうすい斜線がいれられた模様が、風がさあっとわたっていく金色の麦畑のような、ゆらゆらとたちのぼる蜃気楼のような、不思議な空間の広がるイメージ。 真ん中にすっくと立っている横顔の男の子は、小さな男の子ティモシーのお気に入りのポーズなのか、本文中にも二度ほど出てきます。
それはティモシーが、少し年のはなれたお兄さんジョンが学校から帰ってくるのを待ち構えていて、さあ遊んでもらおうと、出迎えるときが一度目。 表紙のようにジョンを見上げて、 「おかえり おかえり」 と、とびだしてきます。
なにしろティモシーは小さくて、まだ学校に行っていないので、ほかに遊び相手がいないのです。
でも大きくて何でも出来るジョンから見ると、まだ小さくて何も出来ないティモシーは、 「ぼくもぼくも」 とくっついてまわる足手まといでしかありません。 友だちと外に出かけるときは置いていきたいし、遊びに来てくれたときには入ってきてほしくないし、1人でいたいときには邪魔してほしくないし、・・・なのに小さいティモシーは、 「ぼくもぼくも」 と何でも真似して仲間に入ろうと頑張って泣くのです。
赤ちゃんの後追い時期を思わせる、小さな弟の愛らしい執着ぶりに、ほほえましく目を細めながらも、ほんの少し苦笑してしまいそうですよね。
でもティモシーがひたすら身近なおにいちゃんを慕い、尊敬して、何もかもを学び取ろうとまといつく気持ちを、時にうるさく感じながらも、ジョンはちゃんと受け止めています。 例えば、得意のサキソホンをふくとき、部屋の扉を締め切らないで、開けておいて(ティモシーにもきかせて)くれたり。
そんなある日、隣のおうちに見知らぬ小さな男の子が引っ越してきて・・・。
ティモシーのちょこんと後ろ手をくむあのポーズの二度目は、となりの男の子がピンポーンとやってきて、玄関で出迎えるときに見受けられます。
つまり、個人的な解釈ですが、表紙のあのポーズは、ティモシーが心ひそかにうきうきと何かを受け入れるときになされるのかなあ、と。 うきたつ心を組んだ手でそっとつつみこむような、ちょっとナイショにしておきたいような、晴れがましく照れくさい気持ちの表れかなあ、などと思いをめぐらせてみたり。
そして、おとなりの小さな男の子が越してきて、ジョン一色だったティモシーの毎日が変わります。 たぶん、学校に行き始めた子どもの毎日が、家庭だけしか知らなかったそれまでの世界から一変するように、ティモシーの世界も変わります。 この春ぴかぴかの一年生、新入園児になった子どもたち、その保護者たち、半保護者のような兄さん姉さんたちには、この劇的な変化がよりいっそう身近に感じられるのではないでしょうか。本人にとっては嬉しいような面映いような、見守る人たちにとっても嬉しいような、淋しいような。
そしてタイトルの「おとなになる日」です。素敵な邦訳ですよね。 表紙のティモシーがこころもち見上げ、後ろ手を組んで迎え入れているのは、誰なのでしょう・・・あるいは何なのでしょうか。 表紙の青空のうつった四角い窓のような枠ですが、そこからほんの少しだけ、ティモシーの足がはみ出して立っているところが、何だかいい感じ。 大きな窓のこちらから、しっかりと地面に足をつけて、窓のすぐ向こうに広がる、どこまでもぬけるような雲ひとつない青空を見上げている、という感じがします。 ティモシーは、もう、低い枠を楽々とこえて、次なる新しい広い世界に歩き出してゆくことでしょう。
ちなみに、本文イラストは、色数をおさえたあっさりとした画風の、繊細でやわらかな線画で、ティモシーもジョンもとても魅力的に描かれています。 ラストのジョンのティモシーたちのための心にくい演出と、ジョンを慕い誇らしく思うティモシーの変わらぬ素直さ、愛らしさに、こんな息子たちもほしかったなー、と、あこがれてしまいます。
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さらに、シャーロット・ゾロトウさんテキストの、兄弟姉妹を描いた作品は、こちらにも。
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『まっててね』 シャーロット・ゾロトウ文 エリック・ブレグヴァド絵 みらいなな訳 童話屋 1991年
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歳のはなれた姉と妹の、まだ幼い妹の視点からみた姉さんへのあこがれをさわやかに描いた物語。 結婚した姉さんが実家に遊びに来て、妹へたっぷりと大人の女性の美しさ、エレガントさをお土産に残して、帰ったところから、 自分もきっとそうなるから、かあさん、まっててね! という、妹の精一杯の努力への決意がみなぎります。
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例えば、 おふろのとき、 パウダーをこぼさないひとになるから。 とか、 デザートをつまみぐいしないし、うえきばちをけとばさないわ。 などなど、シャーロット・ゾロトウさんの例えひとつひとつがしゃれていて、ロマンチック。ちょっぴりせのびしたい、おませなレディにぴったり。 エリック・ブレグヴァドさんの、草色と赤土色の2色使いのあっさりした線画が、物語の内面を静かにひきたてているよう。 テキストには出てこない、草色の目の黒猫が、物語をそっと盛り上げています。
原書は『May I Visit ?』 Harper&Row,Publishers,Inc.,New York,1976 。
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シャーロット・ゾロトウさんの絵本 「さ」の絵本箱へ

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