| ■バグラム・イバトゥリーンさんの絵本 |
| Bagram Ibatoulline ロシア生まれ。モスクワの国立芸術研究所を卒業。絵画、グラフィック・アート、壁画や布のデザインなど幅広く手がける。現在、アメリカのニュージャージー州在住。 |
| 『おとうさんの庭』*『愛をみつけたうさぎ』*洋書 |
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『おとうさんの庭』 ポール・フライシュマン文 バグラム・イバトゥリーン絵 藤本朝巳訳 岩波書店 2006年
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厳しい天候に一度は動物も農場も失った農夫が、移り住んだ小屋のいけがきに、かわいがっていた動物たちの姿を刈り込むことで、再び希望を見出します。 そして三人のむすこたちが大きくなったとき、自分たちの進む道をどうやってきりひらくか、いけがきに答えをみつけなさいと、大切にしていた動物のいけがきを、ばっさり根元まで刈り込んだのでした。
答えを見つけ出した三人のむすこたちは・・・。
深い緑と豊かな土の色、あたたかなまきストーブの燃えるような落ち着いた赤色が、とても美しい重みを持った絵物語。陶器のような輝きと表面を持つ独特の繊細な絵に、農夫一家の運命を静かにつづった文章が、透明感あふれる水のように注がれて、小さな泉のように、感動を呼ぶ絵本。
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むかし、ある農場に、ひとりの農夫が三人のむすことすんでいました。 農夫はあかあかともえるまきストーブのように、こころのあたたかいひとで、どうぶつたちをこよなくかわいがっていました。 三人のむすこはたいそうはたらきもので、一日じゅう、うたいながらはたらきました。 長男は御者の歌を、次男は海の歌を、三男は旅のバイオリン引きの歌を。
何週間も日照りが続いたある春のこと、食べ物のなくなった農夫は、農場も動物も手放し、小さな小屋に移らなければならなくなりました。 悲しみに沈むある日、ふと、小屋のいけがきの手入れをしなければと思い立った農夫は、じっと見つめたいけがきに、動物たちの姿を見たのでした。農夫はつぎつぎに動物たちの姿を刈り込み、大切に、楽しそうに、いけがきの手入れをするようになります。
そうしてむすこたちが大きくなり、世の中に出て行く年頃になったある日、農夫はばっさりと大切ないけがきを低く刈り込んで、長男から順番に、何の仕事を選ぶべきか、こうアドバイスしたのでした。 「毎日、しっかり見なさい。いけがきは、きっとおまえに答えをだしてくれるよ。もちろん、おまえがじぶんで、かりこみをしなければならないがね」 そうして何週間も、ふたたび育っていくいけがきを見つめつづけた長男は、ある日、大バサミを手にとって、刈り込みをはじめたのです。自分が見つけた答えの形を・・・! ・・・
自然の前にはなすすべものないちっぽけな人間の、決してあきらめないひたむきな強さ。 希望を見出す前向きな心が、まきストーブのようにあかあかと、絵本を美しく照らしているようです。 農夫の心にこたえて、自分たちの未来を自分たちで形作った三人のむすこたちも、生垣とおなじように堂々と美しく、頼もしく思えます。 イラストにさりげなく描きこまれた、三人それぞれの細やかな個性も、その三人が、頁をめくるごとに、それぞれだんだん父親そっくりになっていくところも、見逃せないほほえましさ。 行ったこともない遠い場所の遠い昔の風景なのに、懐かしく心休まる感じがするは、おっとりと優雅な風貌の人物の、ひとりひとりの表情がとても温和だからでしょうか。ひび割れたゆで卵の殻のような、陶器のような、タイルのような独特の表面の技法のせいでしょうか、しっとりとした重厚な色合いのせいでしょうか。 やきものの上に上薬をはけでぬったような、透明な艶の仕上げのタッチが、流れる風のようで、流れるメロディのようで、流れる時間のようで、不思議な雰囲気。
三人のむすこたちのおくるあたたかな結末に、心の中まで明るく輝く絵本。
テキストのポール・フライシュマンさんは1952年カリフォルニア州生まれ。ニューベリー賞、スコット・オデール賞を受賞。邦訳作品には、『種をまく人』(あすなろ書房) などがあります。
原書は『THE ANIMAL HEDGE』2003 Walker Books Limited, London SE11 5HJ とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『The Animal Hedge (ハードカバー)』 Walker Books Ltd (2003/10/6)
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『愛をみつけたうさぎ』 エドワード・デュレイン奇跡の旅 ケイト・ディカミロ作 バグラム・イバトーリーン絵 子安亜弥訳 ポプラ社 2006年
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裕福な家の小さな女の子のお人形だった陶器のうさぎ・エドワード・デュレインが、運命のいたずらで持ち主から引き離され、次々と新しい持ち主に愛されながら、いつしか長い年月をさすらいつづけ、愛をみつけた、壮大な旅の物語。心をゆさぶられるような出会いと別れを繰り返しながら、愛することを学び、失うつらさにうちのめされて、心を閉じようとしたとき・・・。
2004年ニューベリー賞受賞作『ねずみの騎士でスペローの物語』の著者、ディカミロのつづる、感動の物語。 (『愛をみつけたうさぎ』ポプラ社 帯のコピーより)
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むかし、小さな女の子に愛された陶器のうさぎがいた。 名前はエドワード・デュレイン。贅沢で、豪華で、優雅で、完璧なうさぎ。 持ち主の女の子は彼を愛したが、彼は自分だけを愛し、他のだれも愛さなかった。
むかし、女の子との船旅の途中で、船から落ち、海底の泥の中での長い月日の末に、老猟師に助けられたうさぎがいた。 老夫婦のもとでうさぎはスザンナと名づけられ、手作りの清潔なワンピースを着せられて、子どものように可愛がられ・・・そして、体裁を気にする娘が遊びに来て、捨てられた。
むかし、ゴミ捨て場から犬にほりおこされ、放浪を続ける男に拾われて、わたりうさぎとしてさすらいの旅をしたうさぎがいた。 陶器のうさぎは、お古のぼうしとハンカチの間に合わせの服を着せられて、マローンと呼ばれて可愛がられ・・・そして、列車の無賃乗車をとがめられ、乗務員に窓から放り投げられた。
むかし、・・・
華やかな舞台から転げ落ち、さんざん辛苦をなめつづける陶器のうさぎ・エドワード・デュレインを、偶然拾い上げた人々もまた、中心から少し外れたところでひっそりと暮らし、同じく辛苦をなめ、それぞれに傷口を抱えている人々でした。 陶器のうさぎ・エドワード・デュレインは、さまざまな名前で呼ばれながら、彼らに心を開き、彼らを見つめよりそい、彼らを愛することを学んでいきますが、突然おそいかかってくる危機や別れに対して、叫ぶことも、助けることも、何も何もできません。 愛をみつけたばかりに、失うつらさもあじわいつくすエドワード・デュレイン・・・。
陶器のうさぎ・エドワード・デュレインと、本を読みすすむ読者の視点は、もしかすると、自発的に何もできず、はがゆくもただ手をこまねいているしかできないところが同じかも。 本の中のさまざまな事情を抱える登場人物たちひとりひとりの悲しみに触れ、切なさを知り、いつしか心を熱くよせ、真剣に耳を傾けながら、彼らにふりかかる非情な運命に対して、何も何もできないところは同じ。 彼らに可愛がられ、なぐさめられ、いたわられ、心温められながら、どうして、大切なときにずっと彼らのそばにいてあげられないのでしょう。
エドワード・デュレインの 「愛なんてつらいだけだった。」 という悲痛な言葉は、作者の深い人間愛と無常な社会の描写の中で、読者の胸につきささるよう。
そんななかで、エドワード・デュレインの、人々と過ごしたひとときが、こんなにもまぶしく、切なく、いとおしく、はかなく、陶器の輝きのように静かに照り輝いているのは、現実とメルヘンの狭間をたゆたう物語を読みながら、本物の旅をともに過ごし、感じたから、ですよね。 物語を部分的に見れば、小さな子どもが望むおとぎばなしのように、「いつまでも幸せに」暮した結末ばかりではないかもしれないけれど・・・さまざまな人生が交錯する中で必ず含まれる、幸せととなりあわせのいろいろなものたちが、目をそむけることなく描き出されているように思います。 それだけに、単なるおとぎばなしで終わらない、深い深いものが横たわっていて、何度でも、読むたび新しい出会いを見つけることができそう。
挿絵のバグラム・イバトーリーンさんの、写真と見紛うような、アンティークな雰囲気のイラストが、物語にいっそうの気品を添えています。 口絵というのでしょうか、裏面に印刷のない、1ページまるまるのカラーイラストのページが適宜さしはさまれ、人々とエドワード・デュレインの束の間の一場面を、心に残る美しさで丹念に描きとめてくれているところが、嬉しい。 ひとつひとつの出会いが、奇跡のような、本物のつながりなのですよね。
原書は、『The Miraculous Journey Of Edward Tulane 』2006 Walker Books Limited,London SE11 5HJとあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『The Miraculous Journey Of Edward Tulane (ハードカバー)』 Candlewick Pr (2006/2/14) |
邦訳と表紙が異なっています。
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テキストの作者のケイト・ディカミロさんはミネソタ州在住、『ねずみの騎士でスペローの物語』(ポプラ社) で2004年ニューベリー賞受賞、とあります。 (『愛をみつけたうさぎ』表紙カバー 裏見返し 著者紹介 より)
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『The Nightingale (ハードカバー)』 Walker Books Ltd (2002/10/7) |
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『Hana in the Time of the Tulips (ハードカバー) 』 Candlewick Pr (2004/08)
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『The Queen's Progress: An Elizabethan Alphabet (ペーパーバック) 』 Puffin; Reprint版 (2005/4/21)
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